Yahoo!のニュースに、「給与マイナス千円 明細物議」という記事がありました。
要約すると、引っ越し会社の元従業員の給与明細中「引越事故賠償金」とする欄で11万3550円が控除され、差引支給額はマイナス1000円となっており、一方的に給料から天引きされたというものです。
果たしてこのようなことが可能(合法)なのでしょうか。
労働基準法によれば、所定の賃金の全額が支払われるのが原則とされており、これを全額払いの原則と呼んでいます(労働基準法24条1項本文)。
この場合、賃金債権と損害賠償債権とを相殺することはできないのかという話になります。
判例・通説では賃金債権を相殺することはできないとされています。
ただし、禁止されているのは「一方的な相殺」であり、労使間の同意があれば相殺も可能であるとされています。
その同意については、
・労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき
でなければならず、かつ、
・同意が労働者の自由な意思に基づくものであるとの認定判断は、厳格かつ慎重に行われなければならない
としています。
報道されているケースの具体的な事情は分かりませんが、一方的に相殺をすることは、原則として不可であり、同意をするにしても慎重に検討する必要があります。
余談ですが、よくある話で「会社が給料を払ってくれない。詐欺だ!捕まえろ!」というのがありますが、もちろん詐欺ではありません…
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